「処刑された李永吉氏」は健在、韓国情報当局またもや大恥
- uhyoshi-yami
- 2016年5月11日
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韓国の情報当局が今年2月に「電撃処刑された」と伝えていた朝鮮人民軍の李永吉(イ・ヨンギル)前総参謀長(朝鮮人民軍序列3位)が、朝鮮労働党第7次大会において「政治局候補委員」として名前が上がった。処刑されていたはずの李永吉氏が朝鮮労働党の重要な地位に就いたのだ。ここ最近、韓国の情報当局は金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長のモスクワ戦勝記念行事出席、朴正川(パク・チョンチョン)朝鮮人民軍総参謀部副総参謀長解任など、誤った情報を国会情報委員会などに何度も報告してきた。これでは韓国政府の内外から「裏付けのない情報を公表し、あるいは情報を読み違えて自ら信頼を失っている」といった指摘を受けるのも当然のことだ。
政府が李永吉氏処刑のニュースを最初に公表したのは、開城工業団地閉鎖が発表された2月10日だった。当時、政府は「李永吉氏は2月2日か3日、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記主催の党中央委員会・軍党委員会連合会の前後に処刑されたようだ」とする資料を公表した。韓国軍の合同参謀議長に相当する地位にあった李永吉氏処刑のニュースは、開城工団閉鎖を前に金正恩政権の残酷さを改めて認識させる効果があった。とりわけ李永吉氏は昨年、非武装地帯で地雷を爆発させた当事者の一人として注目され、また金正恩氏の信頼も厚かったことから、処刑のニュースに伴う衝撃は一層大きかった。
韓国の情報当局が当時伝えた李永吉氏の罪状は「分派活動および派閥勢力・不正」だった。要するに金正恩氏に反対する派閥の構築および権力乱用ということだが、専門家はこれらの罪状について「最高尊厳(金正恩氏)の権威に傷を付ける結果をもたらすため、これは処刑の理由になり得る」との見方を示していた。ところが李永吉氏の健在が明らかになると、「分派活動」の容疑が掛けられたとする情報当局の判断能力自体が非常に疑わしいものとなった。ちなみに韓国政府関係者は李永吉氏の現状について「階級を降格させた上で、再び仕事を任せたようだ」との見方を示している。ただし北朝鮮は李永吉氏の姿を公表はしなかった。
韓国政府の情報当局が北朝鮮関連情報を読み違えるのは今回が初めてではない。 昨年4月、情報当局は国会に「金正恩氏は5月にモスクワで行われる戦勝記念行事に出席する」と報告したが、その翌日に北朝鮮がロシアに不参加を通知し大恥をかいた。情報当局による立て続けのミスを受け、米国ワシントン・ポスト紙は「韓国の情報機関が主張する内容は、正しいことと同じくらい間違うケースもある」と指摘したほどだ。
さらに昨年11月、情報当局が国会に「解任されたとみられる」と報告した朴正川朝鮮人民軍総参謀部副総参謀長兼火力指揮局長も、その数日後には労働新聞を通じて在任中であることが確認された。情報当局は朴正川氏について当初「8月に朝鮮人民軍が砲撃を行った際、韓国軍の反撃に対応できなかった複数の人物が責任を追及されたようだ」と指摘し、解任されたとの見方を示していた。
問題はこの種の誤った情報発信が国内外に大きな影響を及ぼしかねないという点にある。安全保障問題のある専門家は「北朝鮮関連情報が間違っていた場合、韓国の安全保障政策に決定的な悪影響を及ぼすのはもちろん、外交問題にまで発展する恐れがある」と指摘する。
情報当局は今年2月、国会情報委員会に「北朝鮮の長距離ミサイルはロシアから供給されているようだ」と報告したが、直後にロシア側から「韓国の情報当局は、ロシアが北朝鮮にロケット(ミサイル)部品を供給したと発表したが、これは非常に無責任でなおかつ専門性に欠けた発言だ」と激しく批判した。すると4月に情報当局は国会に「北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)技術はロシアのものに近いが、ロシア政府とは関係ない」と改めて報告した。上記の韓国政府関係者は「北朝鮮関連情報でミスが見つかると、そのたびに政府に対して『北朝鮮問題を国内問題に利用している』といった批判の声が高まるだろう」と警戒した。
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