従来路線の二番煎じで幕開けした「金正恩時代」
- uhyoshi-yami
- 2016年5月10日
- 読了時間: 3分
北朝鮮で36年ぶりに開催された朝鮮労働党の第7回党大会は9日、金正恩(キム・ジョンウン)氏に「朝鮮労働党委員長」という新たな肩書を贈り、政治局常務委員など党指導部を確定させて閉幕した。
北朝鮮は、党大会開催に先立ち「輝かしい設計図」と「新たなる全盛期」を予告していたが、実際に公開された政治・経済・対南(韓国)政策は従来の路線の二番煎じにとどまり、新たに任命された労働党指導部もまた、金日成(キム・イルソン)・金正日(キム・ジョンイル)時代の旧世代の人物が主軸となった。北朝鮮の事情に詳しい消息筋は「『金正恩時代』を宣言するため開かれた今回の党大会は、古い白黒写真を見ているかのよう」と語った。
■金日成時代を思わせる「党委員長」
金正恩氏は9日、党規約改正によって新設された党の委員長職に推され、従来の「党第1書記職」は廃止されたものとみられる。韓国統一部(省に相当)の当局者は「第1書記も党委員長も、どちらも『党の最高位』という点は同じ。看板を掛け替えただけで、本質は全く一緒」と語った。
党委員長は、祖父・金日成主席が務めていた「党中央委員会委員長」を連想させる。かつて金日成氏は、1949年から党中央委員会委員長の資格で北朝鮮を統治し、「金日成選集」などには、この肩書を「党委員長」と縮めた表現が登場する。このポストは、66年の第2回党代表者会で金日成氏が党中央委員会総書記に選出されたのに伴って廃止された。韓国政府の関係者は「金正恩氏が、67年前の金日成氏のポストに就いたことで、党中央委員長職を(66年の廃止から)50年ぶりに復活させたことになる。金日成時代への郷愁を刺激しようという狙い」と語った。日本のNHKも「祖父の金日成主席に倣う形」と分析した。
世宗研究所統一戦略研究室の鄭成長(チョン・ソンジャン)室長は「労働党は委員会ではないのに、『党委員長』という表現は話にならない。常識がきちんと通じない北朝鮮の現実を反映している」と語った。また金正恩氏は9日、党中央委員会委員、党政治局常務委員および委員、党中央軍事委員長など、従来の党の役職にも再選された。
■崔竜海書記は再起、リ・スヨン外相は昇格
9日、新たに選出された党中央委員会は全員会議を開き、労働党の首脳部たる政治局常務委員5人を選出した。金正恩氏(32)、金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長(88)、黄炳誓(ファン・ビョンソ)人民軍総政治局長(76)の既存メンバー3人のほか、朴奉珠(パク・ポンジュ)首相(77)と崔竜海(チェ・リョンへ)労働党書記(66)が新たに選出された。金正恩氏を除くと、全員が金日成・金正日時代から30-40年にわたって要職を務めてきた人物だ。
崔竜海書記は、2014年に総政治局長を解任され、政治局常務委員から政治局委員に格下げされたが、わずか2年で常務委員に復帰した。安全保障部局の関係者は「昨年は一時失脚もしたが、起き上がりこぼしのように復活した。再び重責を担う可能性がある」と語った。崔竜海書記の父親、崔賢(チェ・ヒョン)氏は、植民地時代に金日成氏と共に活動していた人物。またこれとともに、党中央委員会は政治局委員19人と政治局候補委員9人も選出した、と共同通信は伝えた。共同通信によると、リ・スヨン外相が候補委員から委員に昇格した。駐スイス北朝鮮大使を30年間務めたリ外相は、90年代に金正恩氏のスイス留学生活を後押しした縁で、金正恩氏とは格別な関係にあるという。
一方、金正恩氏の妹で北朝鮮の政権の「ナンバー2」と呼ばれる金与正(キム・ヨジョン)労働党宣伝扇動部副部長(29)は、今回は政治局入りできなかった。しかし統一部の当局者は「与正氏がナンバー2の地位を維持する上では、何も問題ない。金正日総書記の妹、金敬姫(キム・ギョンヒ)氏も、64歳になってようやく政治局委員になった」と語った。このほかの政治局委員および候補委員、書記局書記の名簿は、9日の時点では公開されなかった。
Comments